先の記事 ヨガはスピリチュアルなのか? の続きです。
ヨーガの目的は心の作用を止滅させること。
では心とはなにか?私たちが心だと思っているものは何か?心の動きが止滅したときに身体では何が起こっているのか?
考えを深めるきっかけはこの本にありました。
【奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき】
ハーバード大学で脳神経科学の専門家として活躍していた作者がある日脳卒中を起こし、左脳の機能を著しく損傷。そのとき彼女に起こったことは心の沈黙という形のない奈落への旅。この旅の間中、彼女のわたしという存在のいちばん大切な部分は深い安らぎに包まれていました。
奇跡の脳 [ ジル・ボルト・テイラー ] |
作者が脳卒中で言語中枢や運動感覚を失われたときに起こっていたこと、またそこからの回復が綴らています。興味深いことは宗教的もしくはスピリチュアル(神秘)体験をもたらす神経構造についても語られていることです。
彼女が機能を失った左脳
左脳の言語中枢を経由して、心はいつも、自分自身に話しかけています。これは私が「脳のおしゃべり」と呼んでいる現象です。家へ帰る途中、バナナを買うのを思い出させてくれるのも、この声なのです。
現在、過去、未来を結びつける司令塔が左脳であり、左脳の方向定位連合野によりからだの境界を明確にし自分自身を他から分離された固体として認知しているのです。
左脳とその言語中枢を失うとともに、瞬間を壊して、連続した短い時間につないでくれる脳内時計も失いました。(中略)左の脳の「やる」意識から右の脳の「いる」意識へと変わっていったのです。小さく孤立した感じから、大きく拡がる感じのものへと私の意識は変身しました。言葉で考えるのをやめ、この瞬間に起きていることを映像として写し撮るのです。過去や未来に想像をめぐらすことはできません。なぜならば、それに必要な細胞は能力を失ったから。私が知覚できる全てのものは、今、ここにあるもの。それはとっても美しい。
とても興味深いです。情報をひとつの線として繋げていた左脳が機能を停止したとき、右脳は「今」を感じるのみとなりました。そして身体の境界すらもわからない。ひとつの固体ではなくなり、もはや「私」が「私」だと思っていたものはなくなってしまいました。
左脳が停止すると「脳のおしゃべり」が止んだのです。
作者は左脳が判断力を失っている間、喜びと安らぎと静けさを味わっていたと言います。
この体験から、深い心の平和というものは、いつでも誰でもつかむことができるという知恵を私を授かりました。涅槃の体験は右脳の中に存在し、どんな瞬間でも、脳のその部分の回路に「つなぐ」ことができるはずなのです。(中略)「頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつでも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい」
YOGAS CHITTA VRITTI NIRODHAH. 心の作用を止滅することがヨーガである
左脳の声を黙らせる。ここってヨーガで説いている心の作用を止滅させているということなのではないだろうか?
宗教的もしくはスピリチュアル(神秘)体験をもたらす神経構造にを明らかにしました。ニューバークとダキリは、脳のどの領域が意識の変容をもたらし、個人の意識から離れて、宇宙と「ひとつ」であるという感じ(神、幸福感)を生み出すのか知りたいと思ったのです。
チベットの僧侶とフランシスコ会の修道女は瞑想のクライマックスに達するか神と一体になったと感じたときに、ひもを引くように指示されました。(中略)
まずはじめに左脳の言語中枢の活動の減少が見られ、脳のおしゃべりが沈黙します。次に、左脳の後部頭頂回にある方向定位連合野の活動の減少が見られました。(中略)
こうした最近の研究のおかげで、左の言語中枢が沈黙してしまい、左の方向定位連合野への正常な感覚のインプットを妨げられたとき、私に何が起きたのかを神経学的に説明することができます。わたしの意識は、自分自身を固体として感じることをやめ、流体として認知する(宇宙とひとつになったと感じる)ようになったのです。
まさにこの状態はヨーガでいうところのサマーディー(三昧)=主体と客体に隔たりがない状態。心が止滅している状態。
左脳の機能を停止させ、右脳へとアクセスすることで心を止滅させる。
その方法をシステマティックに説いているのがパタンジャリのヨーガスートラ。段階を踏んでいけるようにアシュターンガ=八支則で示されています。
止まることのできない心をコントロールする方法を知るということ。自分で手綱を握る。
どんなときに、深い心の安らぎのループが働いているのかに気づくことができれば、その回路に意識的につなげることが容易になります。どんなときにこの回路が働いているのかわからず、悪戦苦闘している人もいるでしょう。その唯一の理由は、他の思考に心が向かっているせいです。これは、当然のことです。なぜなら、西洋の社会は左脳の「する」(doing)機能を右脳の「ある」(being)機能よりずっと高く評価し、報酬を与えるものだから。あなたが右脳マインドの意識に近づくのが難しいのは、あなたが成長するあいだに「こうしなさい」と教えられたことを実にうまく学んできたからにほかなりません。細胞達のこれまでの成功を、褒めてあげてください。そのうえで、わたしの仲の良い友人、カット・ドミンゴ博士が宣言しているように、「悟りは、学ぶことではなく、学んだことを忘れること」だと知りましょう。
こうした脳の機能を知ることで自分で自分の心を運転する。能力を思うままに操って人生の舵取りをするのです。高速で流れていく社会の時間の中、移り行くモノに心を乱され続けるのではなく平和な心を保つために、左脳と右脳のバランスをとるのです。
左脳によって私は「限定された私」として認識している。右脳によって私は永遠だと実感しています。
瞑想状態でなくとも左右のバランスを自分で決めることで心をコントロールすることができるのです。左脳と右脳のバランスをとる。どちらで考えるのかを自分で決める。そんなことできないように思いますよね?
sita yumiko先生の言葉をお借りします。
右と左を繋ぐんですよ。あるいはバランスするんです。「人間そんなコントロール権は持っていない」と皆は思ってるんでしょう?ここはひとつ、科学者ではない単なるヨガの人である私に言わせてください。
それは「わたし」によって可能なんです
ヨーガの先生だけでなく、脳卒中になる可能性のある人すなわちすべての人におすすめしたい本。
自分への理解が深まるだけでなく、人間の可能性へ勇気がもらえます。
おもしろいね。ヨーガって。
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